|
||
|
|
リンパ浮腫治療成績
当クリニック開院時には、当然のことながら当クリニックにおける治療データがありませんでしたので、予想される治療成績あるいは治療費などを欧米の発表データを基にお知らせしておりました。しかし本ホームページの内容は、2005年9月1日から2007年3月31日までの当クリニックにおける治療データに基づいております。 以下に、2007年度札幌市医師会学会において発表しました治療成績を開示しておりますので、ご一読ください。 また、英文学術医学雑誌に掲載される当クリニックの詳細な論文をお読みになりたい方は、rhythmic@minos.ocn.ne.jpへご依頼ください。必要であれば和訳版も作成致します。 四肢リンパ浮腫に対する2段階方式複合的理学療法の実際 はじめに 2段階方式の治療プログラムからなる複合的理学療法は、現在国際的にはリンパ浮腫治療法としてのエビデンスレベルが最も高く1)、また長期的予後の確立した治療法2-4)であり、本邦での普及が最も期待される治療法5)である。本稿は、日本人女性リンパ浮腫患者を対象として、本治療法の効果を前方視的に検討した研究報告である。 対象及び方法 本研究では、2005年9月1日から2007年1月31日までの間に当クリニックを四肢の浮腫を主訴に受診した265名の患者から、2段階治療プログラムからなる複合的理学療法が適応と診断された四肢リンパ浮腫患者102名 (年齢 中央値64歳: 範囲 40-86歳)を対象とした。102名すべてが日本人女性であり、リンパ浮腫の発症から本治療開始日までの期間の中央値は17.0ヶ月(範囲 1 - 444ヶ月)であった。多くの患者は弾性スリーブあるいはストッキングの着用や空気圧迫法などによる治療を行い無効であったという経験を持っていたが、今回の検討では前治療の有無は無視することとした。 通常複合的理学療法は治療期と維持期の2段階からなり、治療期ではスキンケア・用手リンパドレナージ・加圧包帯・加圧下運動療法2-5)により患肢の縮小に努めており、治療は1日1回を連日行うことを原則としている。治療効果判定のため四肢の容積を7カ所の周囲径から算出し、治療前後の患肢容積縮小の有無を検討した。容積浮腫変化率(%) は (治療後患側容積−治療前患側容積)
/ (治療前患側容積−健側容積) ×100 により計算した。 右下肢続発性リンパ浮腫患者の、治療期全治療日における下肢の肉眼所見と両下肢容積の推移を図
1に示す。
![]() ![]() 結果 治療期における上肢リンパ浮腫患者の患肢容積は、中央値5.5
回の治療により有意差(p=0.0006)をもって減少し、浮腫減少率は58.5%であった(表1)。また下肢においては、中央値9
回の治療により有意差(p<0.0001)をもって減少し、浮腫減少率は72.7%であった(表2)。 図
1に示す右下肢リンパ浮腫患者は、10回 (11日間) の治療において74.8%の浮腫減少率を示し、ほぼ標準的な経過を示していた。この患者の治療期の浮腫減少量は2,872
mlであるが、1回目の治療によりその49.1%が、また5回目までに90.4%が減少していた。 考察 本研究での上肢・下肢を含めた四肢リンパ浮腫患者(n=102)における浮腫容積は中央値8
回で69.35
%減少となり、この治療成績は従来欧米において報告されている治療成績4)と同等である。 本邦では、国際リンパ学会合意文書1)やMedlineで検索不可能な、エビデンスレベルの低い治療法が少なからず行われている。弾性スリーブ・ストッキングは主に、浮腫の減少した四肢を維持するため、あるいは容積が減ることにより伸びてしまった皮膚では不十分となった皮膚圧を補うために使用するものである。Badgerら6)は無作為化臨床試験により、圧迫包帯を使用することなく最初から弾性ストッキングを着用した場合は、治療効果が乏しいことを証明している。また空気圧迫機器に関しては、多くのリンパ浮腫専門医がその使用に反対3,4)し、1998年に発表された無作為化臨床試験7)でも、空気圧迫機器は乳癌治療後のリンパ浮腫では有意な治療効果が得られなかったことが明らかとされている。これらの事実から、弾性スリーブ・ストッキングを即座に着用させたり、患者自身に空気圧迫機器を購入させることは慎むべきである。 また本邦では1週間、あるいはそれ以上に1回のみの用手リンパドレナージや加圧包帯による治療を行っている医療施設が存在する。しかし図
1に示されるような患肢の変化からはこのような治療法が最適とは考え難い。実際われわれの経験でも、1度のみの加圧運動療法により患肢を縮小させても、1週後には患肢容積はもとの状態に戻っており明確な縮小効果が得られなかった。また、リンパ浮腫患者自身によるセルフケアのため、1
- 3ヶ月に1回程度患者自身による用手リンパドレナージと加圧包帯による治療を指導する努力も行われている。これは縮小した後の患肢に対しての維持管理、あるいはリンパ浮腫発症予防としては有用であるが、限られたトレーニングのみで患者自身に腫大した四肢リンパ浮腫の治療をゆだねても、明確な治療効果を期待することは難しいと考えられる。これらの治療法を継続している施設からの、効果に関する解析報告が待たれるところである。 結語 日本人女性リンパ浮腫患者を対象とした研究に於いても、2段階方式の複合的理学療法はその治療効果が明らかであり、本邦での普及が期待される。 文献 1)
Consensus document of the International Society of Lymphology Executive
Committee. Lymphology 1995: 28: 113-117. 2) Földi
M. Lymphology 1994: 27: 1-5. 3) Lerner
R. Cancer 1998; 83: 2861-2863. 4)
Ko DS, et al.
Arch Surg 1998; 133: 452-458. 5) Yamamoto R and Yamamoto T. Int J Clin Oncol 2007; 12: 463-468. 6) Badger
CM, et al. Cancer 2000 88:2832-2837 |
||||||||||||||||||||||||||||||